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牧師 髙橋彰から、あなたの心に届けたい、心に響くことば。

2022年特別企画 メッセージと朗読とイラストによる「イエスのたとえ」紹介シリーズ ④「ぶどう園と農夫」

イエスの「たとえ」紹介, いのちのたね / 2022年4月22日

「ぶどう園と農夫」のたとえ

1イエスは、たとえで彼らに話し始められた。「ある人がぶどう園を作り、垣を巡らし、搾り場を掘り、見張りのやぐらを立て、これを農夫たちに貸して旅に出た。 2収穫の時になったので、ぶどう園の収穫を受け取るために、僕を農夫たちのところへ送った。 3だが、農夫たちは、この僕を捕まえて袋だたきにし、何も持たせないで帰した。 4そこでまた、他の僕を送ったが、農夫たちはその頭を殴り、侮辱した。 5更に、もう一人を送ったが、今度は殺した。そのほかに多くの僕を送ったが、ある者は殴られ、ある者は殺された。 6まだ一人、愛する息子がいた。『わたしの息子なら敬ってくれるだろう』と言って、最後に息子を送った。 7農夫たちは話し合った。『これは跡取りだ。さあ、殺してしまおう。そうすれば、相続財産は我々のものになる。』 8そして、息子を捕まえて殺し、ぶどう園の外にほうり出してしまった。 9さて、このぶどう園の主人は、どうするだろうか。戻って来て農夫たちを殺し、ぶどう園をほかの人たちに与えるにちがいない。 10聖書にこう書いてあるのを読んだことがないのか。
『家を建てる者の捨てた石、
これが隅の親石となった。
11これは、主がなさったことで、
わたしたちの目には不思議に見える。』」
12彼らは、イエスが自分たちに当てつけてこのたとえを話されたと気づいたので、イエスを捕らえようとしたが、群衆を恐れた。それで、イエスをその場に残して立ち去った。

新約 マルコによる福音書12章1-12節

(聖書 新共同訳)

 

The Parable of the Tenants in the Vineyard

1 Then Jesus spoke to them in parables: “Once there was a man who planted a vineyard, put a fence around it, dug a hole for the wine press, and built a watchtower. Then he rented the vineyard to tenants and left home on a trip. 2When the time came to gather the grapes, he sent a slave to the tenants to receive from them his share of the harvest. 3The tenants grabbed the slave, beat him, and sent him back without a thing. 4Then the owner sent another slave; the tenants beat him over the head and treated him shamefully. 5The owner sent another slave, and they killed him; and they treated many others the same way, beating some and killing others. 6The only one left to send was the man’s own dear son. Last of all, then, he sent his son to the tenants. ‘I am sure they will respect my son,’ he said. 7But those tenants said to one another, ‘This is the owner’s son. Come on, let’s kill him, and his property will be ours!’ 8So they grabbed the son and killed him and threw his body out of the vineyard. 9“What, then, will the owner of the vineyard do?” asked Jesus. “He will come and kill those tenants and turn the vineyard over to others. 10 Surely you have read this scripture?
‘The stone which the builders rejected as worthless
turned out to be the most important of all.
11This was done by the Lord;
what a wonderful sight it is!’”
12The Jewish leaders tried to arrest Jesus, because they knew that he had told this parable against them. But they were afraid of the crowd, so they left him and went away.

The Gospel according to Mark 12:1-12 (The New Testament in Today’s English Version)

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

イエスが語られた「譬え」を取り上げる4回目です。この譬えが、イエスがエルサレムに入城され、ご自身が受けることになる十字架の苦難を予告された後に配置されているのは、初代の教会の人びとがこのたとえをイエスの身に起きた十字架の苦難と復活の出来事と重ね合わせて受け止め、解き明かして伝えてきたことを証ししています。

ユダヤの人びとにとって、ぶどう園、主人、農夫などのモチーフはイスラエルの神を語る大事なイメージとして語り継がれ共有されていたものでした。預言者イザヤの「ぶどう畑の歌」は主が「よく耕して石を除き、良いぶどうを植えた(イザヤ5:2)」ぶどう畑をイスラエルの民になぞらえ、酸いぶどうが実ってしまたことへの裁きや世話を怠った農夫たちを民の指導者たちになぞらえて語っています。派遣した僕たちを預言者たちと重ねて、忠告を与えたのに聞き入れなかったため、このぶどう畑は踏み荒らされると、イザヤは厳しい裁きの預言を告げました。イエスの譬えを聞いた人びとは、おそらく何度も聞かされ続けてきた預言者たちの言葉も思い起こされながら聞いたことでしょう。

イエスのたとえそのものも、過激な話です。暴力的な表現がなされますが、その背景にすでに構造的な社会の暴力があります。神がすべての者たちに平等に与えた土地は、各自が耕して自分たちの糧を得る先祖伝来の嗣業の地ではなく、豊かな者に占有されて垣がめぐらされ、ぶどうが植えられています。農夫たちは雇われの小作農夫の身分になっています。主人は各地の所有地を見回りに旅します。貧富の差が加速する社会で苦しむ人びとの怒りや憎しみ、敵意が増幅しています。

ぶどう園の収穫は、最初の三年は食べず、四年目の実りは神への捧げものとし、五年目の収穫から人びとは糧を得ました(レビ19:23-25)。決算の時(カイロス)が衝突を起こします。遣わされた僕は、殴られ、頭を傷つけられ、暴行され、殺されます。最後に主人の息子は殺されて「外に放り出され」ました。小作人たちの怒りは、反撃で解消されたでしょうか。それはさらなる暴力を生み、死をもたらしました。そして農夫たちはもっと巨大な力で、いのちも土地も奪われました。預言者イザヤの時代も、イエスの時代も、そして今も、土地の所有や収穫の争いは形を変えながらも暴力と奪い合いが続いています。

イエスは、預言者たち(イザヤ8:14-15,28:16)や詩人(詩118:24,25)が伝えたように、外に放り出され、捨てられた石が土台に、隅の親石になると告げられました。

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